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Nintendo Dream Vol. 112
Text transcription of a Pikmin 2 interview from magazine Nintendo Dream Vol. 112, provided by my friend @yawarakaika2525.
Lot of interesting information here, especially the details on them cooperating with other companies' brands for the treasures.
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【ピクミン2 人類代表インタビュー】
ピクミン2には、牛乳ビンのフタやゲーム&ウォッチなどが登場し、昭和時代に子供だった現在の大人に懐かしさを感じさせます。今回のインタビューに登場した3人の人たちは、みんな昭和40年代前半(1965年から1970年)に生まれました。平成(1990年以降)生まれのあなたも、昭和(1965年頃)生まれのお父さん方も、年齢は秘密にしているお姉さん方も、みんなでこの記事を読んでください。
【コラム】
「ピクミン」はもともと「ピキ」というタイトルで開発されていました。「ピクミン」というタイトルは、「ピキ」が「ピックミー(pick me)」、そして「ピクミン」と変化して決まりました。
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日野重文(ひの しげふみ)さん
担当:ディレクター
誕生日:1966年3月13日
出身地:兵庫県
彼がこれまでに関わったゲーム:ヨッシーアイランド(SNES)、ヨッシーストーリー(N64)、ピクミン(GC)
大切なもの:色んな思い出
阿部将道(あべ まさみち)さん
担当:ディレクター
誕生日:1969年1月24日
出身地:大分県
彼がこれまでに関わったゲーム:1080° スノーボーディング(N64)、ピクミン(GC)
大切なもの:ファミリー
山口亘(やまぐち わたる)さん
担当:アートワーク・クレイイラストレーション
誕生日:1968年3月2日
出身地:大阪府
彼がこれまでに関わったアートワーク:ポケットモンスター赤・緑、1080° シルバーストーム(GC)、ピクミン(GC)
大切なもの:家族
【なすびのようなピクミン】
記者:「ピクミン2」の発売日は、緑の日(4月29日)なんですね。
阿部:ええ、ピクミンにぴったり合うでしょう?
山口:ピクミン2のパッケージでも、緑を背景にして、赤・青・黄・紫・白のピクミンが並んでいます。
記者:「ピクミン」では赤・青・黄のピクミンが登場していたので、新しく登場するピクミンは緑色だろうかと想像していました。
日野:紫ピクミンは、実は最初は緑色でした。あれ?どうして緑色ではなくなったのだろう…?
山口:それは、あなたが反対したからでしょう?(笑)
日野:そうでした(笑)。「ピクミン2」に新色のピクミンを登場させようと決まったとき、それについて色々議論しました。緑色のピクミンも、ひとつの候補としてありました。しかし、私が「なすびのようなピクミンを見たい…」と言ったので、紫色が採用されました。
山口:私は緑色の方がいいと思っていたのに、採用されませんでした(笑)。
阿部:緑色とは言っても、葉っぱのような緑色ではありませんでした。限りなく黒に近い、コガネムシ(Scarab beetles)の色のような、暗い緑色でした。
日野:私はどうしても、なすびのようなキャラクターが欲しかったのです。
山口:実は、紫ピクミンは日野をイメージしています。
記者:絶対そうだろうなと思っていました(笑)。
阿部:私たちも、紫ピクミンのことを「日野ピクミン」と呼んでいました(笑)。
記者:ところで、3人とも、ニンテンドードリームには初めて登場するのですよね?「ピクミン2」では前作と同じく、日野さんと阿部さんが共同でディレクターを務められたそうですね。どうやって仕事を分担したのですか?
日野:私は力仕事を担当しました(笑)。
記者:それは、あなたが紫ピクミンに近いイメージだからですよね(笑)。
阿部:はっきりと誰がどこを担当していたかを説明することは難しいですが…。
日野:当初の役割分担では、私がゲームデザインを監修しました。阿部がデータ管理、というよりかは、プログラマを統括する役割を担当しました。こうして「ピクミン2」の開発が始まりました。
記者:山口さんが担当されたアートワークというのは、どういうお仕事なんですか?
山口:パッケージや取扱説明書の制作と、広告や雑誌に掲載されるロゴやイラストの制作が主な仕事です。近年、私自身は、マリオファミリーに関連するイラスト全般の監修にも携わっています。
記者:ピクミンのクレイモデルを作られたのも、山口さんですか?
山口:はい、私が一人で作りました。今日持ってきたクレイモデルは、現在使われているものとは顔が違います。このモデルは、一番開発初期の段階のときに、宮本に見せるために作ったものです。しかし、開発が進むほど紫ピクミンの顔が変わっていったので、別のものを作り直しました。
(画像の説明:これは山口さんが持ってきたクレイモデルです。なんと、紫ピクミンに尻尾が生えています!)
【時間を気にせず遊べるゲーム】
記者:「ピクミン2」の開発は、いつ始まったのですか?
日野:前作の開発が終わってまもなく、つまりは2002年の年末頃に始まりました。
記者:前作の発売直後から、宮本さんが次回作について話されていました。「ピクミン2」は昨年の秋に発売される予定だったのに、発売が延期されたのはなぜですか?
日野:その頃は、発売日も決まって、「ピクミン2」の完成は間近でした。しかし、もう少し作り込むことによって、「ピクミン2」はより良くなるのではないかと考えて、発売を延期しました。そして、昨年の秋からこの春までの期間を、調整に充てたのです。
阿部:大きなシステム変更があったわけではありません。ゲームを遊んだ時のやりごたえを高めるために、ゲーム序盤の展開なども含めて、じっくりと調節を行いました。
日野:ゲームシステムはそのまま変更せずに、演出や、デモ映像、ピクミンと出会う順番など、全ての面を見直しました。
記者:デモ映像といえば、オープニングデモの出来は素晴らしかったです。
阿部:オープニングデモに関しては、それを見ただけでゲームの目的がわかるようなものを目指して制作しました。
記者:オリマーは家族に会わずに、すぐにピクミンの星へ戻るんですよね(笑)。
阿部:そう。私たちと同じように、彼は会社のために、家にも帰らないでひたすら働きます(笑)。
山口:私は、彼は一回くらい家に帰るべきだと思いましたが(笑)。
記者:そもそも「ピクミン2」では、どういうプレイ体験の仕組みを作ろうと考えていたのですか?
日野:私は、とにかくプレイヤーにクリアしてもらえるゲームを作りたいと思っていました。前作を開発した当時は、このゲームシステムがベストだと思っていました。しかし、30日間でクリアしなければならないという制限があったため、前作は実際にはかなりストイックなプレイ体験だったんです。そこで、今作の開発では、まず日数制限を外すことに関する議論から始めました。
【コラム】
前作「ピクミン」の開発中、ピクミンが現在のデザインに近づいてきた段階では、ピクミンは黒いものしかいませんでした。また、彼らの体長は30cmから50cmほどで、子猫くらいのサイズでした。
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(【時間を気にせず遊べるゲーム】の続き)
記者:日数制限がないと、プレイ体験が間延びしたものになるとは思いませんでしたか?
日野:ええ。そして、そこを補うために、ピクミンを増やせない地下洞窟を考えついたのです。地下でのお宝集めで前作が持っていたストイックなプレイ体験を行え、地上では日数制限をなくしてのんびり探索できる。そんな仕組みが成り立つように、私たちは新しいゲームシステムを構築していったのです。
記者:前作を遊んだ人なら、日数制限が無かったとしても、効率よくゲームを進めていきそうです。
日野:探索した日数は数えているので、プレイヤーは、より短い時間でクリアを目指すという遊び方も自由にやっていいと思います。ちなみに、一日の終わりに届くメールは、早くクリアした人より、ゆっくりクリアした人の方が色々なものを読むことができます。
(画像の説明:社長や、オリマーの妻と子供たちが、メールを送ってきます。迷惑メールが紛れていることもあります。)
記者:日数制限がないということは、99日を過ぎると、画面右上の日付表示はどのように表示されるのですか?
阿部:「100」と表示されます。999日を過ぎると「1000」と表示され、9999日を過ぎると「10000」と表示されます。とにかく、やればやるほど日数は増えていくのです。桁数が大きくなると、数字は小さいサイズで表示されます。
日野:数字が小さすぎて読めなくなるほど長く遊べます(笑)。
記者:すごい!借金返済までにそんなに長く日数をかけたら、借金の利息が増えたりしないのですか?(笑)
阿部:実はその案もあったのですが、実装はされませんでした。
(画像の説明:前作「ピクミン」では、パーツ集めが進んでいようがいまいが、30日間しかピクミンの星にはいられませんでした。)
【機嫌のいいピクミンが歌う「愛のうた」】
記者:前作の開発中から、赤・青・黄以外のピクミンを登場させることについては考えていましたか?
阿部:前作のエンディングでは、その3色以外のオニヨンが登場しましたよね。でも、新しい能力をもつピクミンについて考え始めたのは、「ピクミン2」の開発が始まってからのことです。前作をプレイした人が、「こんなピクミンがいたらいいね」と思えるような能力を考えました。1匹で重いものを運べるピクミンや、足の速いピクミンがいたら、便利だし嬉しいでしょう?だから、新しいピクミンの能力は、割と「ピクミン2」開発初期の段階で既に決まっていました。
記者:新しいピクミンに、オニヨンを持たせなかったのはなぜですか?
阿部:新しいピクミンに貴重さを出したかったからです。便利で嬉しくなるような能力を持っている代わりに、彼らは他のピクミンのように簡単には増えません。だから、彼らを大事にしながらゲームを進めなければいけないのです。
記者:前作にはなかったピクミンの仕草は、例えばどんなものがありますか?
日野:色々ありますよ。私たちは知らなかったような仕草もあります。プログラムを担当したスタッフが、ピクミンの色んな仕草を仕込んでおいてくれたのです。前作にあった、溺れているピクミンを青ピクミンが助けるという動作は、実は私たちが知らないうちに、そのプログラマが仕込んだのです。だから、ピクミンの細かい仕草にどのようなものがあるのか、私たちも楽しみにしています。
阿部:そういえば、「ピクミン2」では、ある条件を満たすとピクミンが鼻歌を歌うんです。彼らは前作のCMソングも歌ってくれます。
記者:本当ですか?どういう条件で、彼らはそれを歌ってくれるのですか?
日野:それは秘密です。ヒントとしては、鼻歌は機嫌のいいときに歌うものですよね(笑)。
(画像の説明:大ヒットした、前作のCMソングのCD。この号が発売される頃には、「ピクミン2」のCMが放映されているはずです。)
【前作『ピクミン』の秘密のメモ】
前作「ピクミン」の誕生の秘密を知らないあなたは、このコーナーをチェックしてください!
(参考資料:本誌2002年1月号と、米国の任天堂が発行した『PIKMIN』プレイヤーズガイド。ここに掲載されている発言は、全て2001年10月から11月のものです。)
「宮本:マリオの続編のようなものではない、まったく新しいゲームを作ることを目的に、1999年の春頃に『ピクミン』の開発が始まりました」
「阿部:キャラクターは見たこともないようなものを、操作方法も今までにないようなものを作れ、と指示されました」
「宮本:最初の実験段階では、ピクミンは現在の姿と全然違うキャラクターでした。彼らはアダムとイブという名前でした」
「日野:デザイナーが集まって打ち合わせをしたときに、多くのキャラクターを同時に画面に出すためには、キャラクターデザインは、ゲーム機本体が簡単に処理できるものにすべきだろうと考えました。そこで作ってみたのが、球状の胴体に目と鼻がついているキャラクターだったのです」
「宮本:最初のゲームのテーマは、このキャラクターたちの暮らしを観察することでした。自分が神のようになって、彼らへ愛や闘争心を与えるのです。すると彼らは巣を作ったり、子供を産んだりします。ですが、開発を進めるうちに、もっとプレイヤーがゲームの世界に関われるようにしたいと考えるようになりました。Cスティックを使って群れ全体を動かしたい、というような欲求です。やがて、彼らを掴んで投げられるくらい、彼らに干渉できるようになりました(笑)」
「阿部:自分で積極的にゲームプレイに関わりたいと思っていたので、開発初期の段階から、メインキャラクターは自らどんどん動かしたいと思っていました」
「宮本:私がどうしてもゲームに入れたかったのは、夕方になってその日が暮れていくという部分です。私は『自分で蒔いた種は自分で刈る』というのが、世の中のマナーだと思っています。だから、まだすべきことが残っているのに無情にも1日が暮れていく、という要素にはこだわりました」
「宮本:ここゲームがまだ『アダムとイブ』だった頃は、舞台は原始時代をイメージしていました。村がいくつかあって、マンモスと戦って、戦闘後に味方の種族が何人残るかを見る、というような内容のゲームでした。チャッピー(Bulborb)も、最初はマンモスくらい巨大な生物だったのです。デザインは変わっていないのですが(笑)。でも、開発を進めるうちに、もっと身近なところを舞台にすべきだと考えました」
「日野:背景をどうするか考えたときに、森の中を覗き込んだような地形にするというアイデアがありました。その一方で、ピクミンの動作から、ピクミンは蟻のようなものだというコンセプトが確立しつつありました。この2つのアイデアがばっちり重なって、現在のゲームの世界観にたどり着きました」
「宮本:残酷なものを作ろうとしたわけではありません。しかし、残酷に見える要素を無くそうという態度はとりませんでした。私も子供の頃は残酷な遊びをしましたが、自分で『ピクミン』を遊んだら、残酷な遊びをした時と同じように心が痛みました。このゲームを遊ぶ子供たちにも、そういう感覚を受け取ってもらえたらいいなと思っています」
「宮本:『ピクミン』は、マネジメントや、自然の摂理、科学や数学について学ぶという面で、とても素晴らしいゲームだと思います。文部科学省に、このゲームを推薦してほしいと思っています(笑)」
【コラム】
粘土をこねたり、ガスバーナーでプラスチックを溶かす…そんな作業を、山口さんは会社の工作室で行うそうです。なんだか、任天堂は学校のような会社だな…。
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【ホコタテ運送の新人・ルーイの誕生の秘密】
記者:プレイヤーキャラクターを二人にした理由はなんですか?
阿部:前作では、ピクミンが数箇所で仕事をしているときに、オリマーがあちこちへ移動していました。ですが、もうちょっと便利に全体を見て回りたいと思っていたんですよ。パソコンのゲームだと、マウスでカーソルを動かすだけで移動できるようなものもあります。でも、そういう風にただ便利にするだけではなくて、新しいキャラクターを絡めながら便利にできたらいいなと考えたんです。
記者:それでは、プレイヤーキャラクターを2人にすることは、結構開発の早い段階で決まっていたのですか?
阿部:そうですね。新しいピクミンを2種類登場させて、日数制限をなくして、プレイヤーキャラクターを二人にするというスタイルは、開発の最初の段階で決まっていました。
記者:オリマーとルーイを使い分けると便利ですよね。
阿部:確かにそうです。ただ、これは開発チームで議論したことなのですが、2人が別行動しないとクリアできないというのは、できるだけ無くそうと話しました。2人で行動してもいいし、別々に行動してうまく工夫すればどんどん便利になる、というバランスにしようと。
(画像の説明:このようにオリマーとルーイを別々の場所で行動させ、Yボタンで操作キャラを切り替えると便利です。)
日野:プレイヤーに、オリマーとルーイを別行動させることをゲーム側から強制するのではなく、プレイヤー自らがオリマーとルーイを使い分けたことで、徐々にうまくなったということを体感してほしかったのです。それと、どうしても2人プレイモードを入れたかったので、そのためにキャラクターがもう1人必要だったというのも、ルーイが登場した理由です。
記者:宮本さんが、前作に2P対戦を入れたかったと発言されていましたが、それがついに実現したのですね。
日野:「ピクミン2」には2人で遊べるモードが2つありますが、特に2Pバトルは秀逸ですよ。このモードはピクミンのAIなど、ゲームシステムの根幹を担当したスタッフのこだわりの賜物なんです。彼が最後まで諦めずに、仕様からまとめてくれたおかげで、このモードはゲーム本編とは全く違った、面白いプレイ体験に仕上がっています。楽しみにしていてください。
(画像の説明:上の画像は、赤組と青組に分かれて対戦する「2Pバトル」。下の画像は、2人で協力してプレイできる「チャレンジモード」。)
記者:ところで、「ルーイ(Louie)」は、最初は「ルージー(Loozy)」という名前ではありませんでしたか?
日野:はい。ですが、発音が英語の「loser」と似ていたので、変更したのです。
記者:プレイする人のなかには、オリマーとルーイを別行動させることの便利さに気がつかずに、ずっと2人で一緒に行動する人もいるかもしれません。
阿部:だから、別行動の便利さに気がついてもらうために、チュートリアルでは最初から別行動をしているんです。
記者:ああ、なるほど。プレイヤーに別行動をさせるために、ルーイはオープニングで離れた場所に放り投げ出されたのですね。この展開は、よりプレイヤーにとって役立つように、チュートリアルをしっかり作り込もうということの表れですか?
阿部:そうですね。そのために開発期間を延長したと言ってもいいくらい、ゲーム序盤の展開には気を使いました。本当は、私たちはゲームシステムを詳しく説明せずに、システムの把握をプレイヤーに任せたいと思っていました。遊ぶ人が自分で色々試して、システムに気がついていってくれるだろうから、説明しなくても大丈夫だろうと。ところが、モニタにテストプレイをやってもらったところ、ゲームシステムを理解しないままプレイする人が多かったんです。だから、やっぱり説明を増やしたり、遊びやすくなるようにプレイヤーを導かなければならないと考えて、ゲーム序盤を大きく作り変えることになりました。
記者:チュートリアルって、開発者側としては、なくてもいいと思うようなものですか?
日野:いいえ、チュートリアルは大事なものだと思います。ゲームを開発するときは、かなりの期間をかけてチュートリアルを作りますからね。今回の「ピクミン2」の開発でも、発売を延期してからの期間に、ものすごい数のモニタをとって、テストプレイをしてもらっています。前作をプレイしていない人がどういうプレイをするかを調べると、彼らは私たちが予想もしなかった動きをたくさんするんです。そういう人たちがちゃんとプレイできるように、全ての点をカバーするのは大変でした。
(画像の説明:これはオープニングで一瞬見ることができるルーイの表情です。なんで彼はこんなに目つきが鋭いのでしょうか?)
【コラム】
ルーイが初めてピクミンと出会うとき、なぜよだれを垂らしていたのか。その理由は、ピクミンがホコタテ星特産のピクピクニンジンにそっくりだからです。ルーイは食いしん坊だなあ。
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【日本と海外でお宝は違う】
記者:前作で集めた宇宙船パーツは丸いものばかりでしたが、今作では四角いお宝も運びますよね。
阿部:前作では、ピクミンがきれいに輪になって運ぶ姿を見せたかったのです。今作では四角いものも運びますが、実はピクミンはやっぱり輪になって運んでいるのです(笑)。
日野:最初は丸いお宝ばかりを考えたんです。でも、丸いものばかりでは限度があって、あまり面白くなかったんです。どうしても四角い缶詰を登場させたくて、それを登場させてからは、丸いものへのこだわりを捨てて、お宝の形状は何でもありになりました。
阿部:棒状のものもあります。ピクミンはそれを持ち上げて運びます。
記者:それにしても、「ピクミン2」は世界中で売られるゲームなのに、そうとは思えないほど、日本っぽいお宝ばかり登場しますよね(笑)。
日野:宝石やらをお宝にしなくても、私たちが子供の頃にお宝だと思っていたものを、そのままお宝として登場させればいいじゃないかと思いまして。大人はものを大切に扱わず粗末にしがちですが、子供の頃は牛乳ビンのフタを持っているだけでも嬉しかったでしょう?なんであんなものを集めていたのか、今ではもうよく分からないのですが(笑)。
山口:商標権の関係で、海外版のお宝は日本版のものから変更されているものもあります。日本版、米国版、欧州版のそれぞれで、登場するお宝が違うんです。
記者:日本版では登場しないお宝が登場するなんて、海外版の「ピクミン2」はまさに「お宝」ですね!
日野:アメリカには牛乳ビンに紙のフタがないんです。だから、フタのお宝は、全く別のものに変わります。
記者:「ピクミン2」には、おにぎりなども登場しますよね。
阿部:商標権の絡むお宝以外にも、そういう日本限定のものは色々登場します。そういうものを海外版でも差し替えずに、あえて残そうかという意見もあるんです。
日野:実在するものをゲームに登場させるために、商標権を持っている色々な会社と交渉する仕事をしました。そこで、とても多くの人たちに協力をしていただきました。商品を快くゲーム内で使用させてくれた国内と海外の企業に、このインタビューの場を借りて感謝を伝えたいと思います(笑)。
(画像の説明:商品によっては交渉が難航した企業もあったけれど、牛乳の会社はどこも協力的だったそうです。ところで、あなたたちは牛乳ビンの紙のフタを開けたことはありますか…?)
【お父さん方にも感慨を与えるお宝】
記者:そもそも、どうして実際に存在するものをお宝にしようと考えたのですか?
阿部:「ピクミン2」を、お宝を集めていくゲームにすると決まったときに、実在するものを集めた方がリアリティを感じられると思ったからです。
山口:お宝として登場するものは、私たちが子供の頃に目にしたものばかりなのですがね。
日野:商品を提供してくれた各企業には、少し難しいことをお願いしたんです。それは、現在実際に入手できる商品ではなく、既に廃止されたデザインの商品を使わせて欲しいということです。だから見慣れたものでも、現在手に入るものとはデザインが違うんです。
記者:そういえば、昭和っぽい雰囲気のお宝が多いですね。
日野:「ピクミン2」を、どういった層にアピールするのかという議論をしたんです。もちろん全年齢のゲームだという前提はあります。前作は幅広い年齢層の女性に気に入ってもらえたと思うんです。だから「ピクミン2」では、現在お父さんになっている世代にとっても感慨深いものが作れたらいいな、と考えたのです。そういうわけで、30代から40代の人に懐かしく思ってもらえるようなお宝を登場させたのです。
記者:その世代は、あなたたちと同世代ですね。
山口:最近のテレビ番組では、私たちが青春時代に聴いた曲がよく流れていますよね。それは色んな会社で、私たちと同世代の人たちがものを作ったり、物事を決めたりしているからだと思うんです。
日野:実在のものを登場させた理由はもうひとつあります。それは、ピクミンがどれだけ小さいかを分かりやすくするためです。そのために、画面上でのお宝のスケールにはこだわりました。牛乳ビンのフタなど、実在するものを置くことで、ピクミンの小ささがより伝わるだろうと。ゲームの舞台である惑星がどこなのかは明かしませんが、プレイヤーに自分の日常のすぐそばでゲームのお話が起こっているような錯覚を起こしてほしいと願って、見覚えのあるお宝を登場させました。
記者:確かに、前作と比べて、「ピクミン2」の世界はより身近に感じます。
(画像の説明:身の回りにあるものを運んでいるピクミンを見ると、彼らの小ささを実感できるでしょう?)
山口:コンセプトアートを前作のCGイラストではなく、クレイモデルで作ろうというのも、一番最初はゲーム制作チームからの提案だったんです。その提案の理由は、やっぱり温かみが欲しいからというか、よりピクミンを身近に感じてほしいからでした。
記者:ピクミンとクレイって意外な組み合わせですが、とてもうまくいきましたね。
山口:ただ単に、きれい、すごい、かっこいいっていうイラストではなくて、もう一歩踏み込んだところで、見る人に何か他の感情を植え付けたかったんです。うまく言えませんが、何だか切なくなるような感情を…。
記者:それは、アートワークを制作する上で、あなたがいつも考えていることですか?
【コラム】
お宝として登場するファミコン(NES)ディスクシステム専用ディスクには、よく見ると「謎の村雨城」と記されています。これが何か知らない人は、お父さんに聞いてみましょう。
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(【お父さん方にも感慨を与えるお宝】の続き)
山口:いつもではありません。仕事の種類によります。営業的な戦略やマーケティングに則って、「こういうものが目を引くだろう」「こういうのが人気だろう」ということを考えて描くべき絵もあります。けれど、例えばテレビのCMなどを見ているときに、私たちがいいなと思えるものは、それを作っている人たちが本当に楽しんで作ったことが感じられるものなんです。だから、「ピクミン2」を遊んだ人の中に1人でも「このゲームやイラストは、どういう人が作っているんだろう?」と考えてくれる人がいれば、受け手の感情をつかめたということだと思います。
(画像の説明:ドルフィン初号機(the ship)のクレイモデルは、先端部分が開きます。ただし、中身は空洞です。)
【頑張って生きていこうか、と思えるゲーム】
記者:「ピクミン2」はまもなく発売です。これを待っているユーザーに一言メッセージをお願いします。
日野:とにかくゲームの色々な部分が、各スタッフの個性とこだわりのかたまりなので、じっくりと楽しんでください。
(画像の説明:お宝図鑑(Piklopedia & Treasure Hoard)も、とあるスタッフのこだわりの結晶らしいです。Aボタンでピクピクニンジンを投げられるのは、とっても嬉しい仕様です!)
記者:宮本さんやあなたたちはいつも、この場にいない他のスタッフの仕事をアピールされますね。
日野:「ピクミン2」のプレイ体験の部分の企画は、その多くがプログラマが主導して行われているんです。この部分においては、「ピクミン2」は任天堂の中でも、珍しいスタイルで開発されている数少ないゲームのひとつなんです。
記者:阿部さんのメッセージは?
阿部:考えられる限り、登場させたいと思ったことは全てこのゲームに入っているので、自由に遊んでください。のんびり遊んでもいいですし、急ぎたい人は急いで遊んでもいいですし。
記者:「ピクミン2」に関しては、思い残すことはないですか?
阿部:ないです。
記者:「ピクミン3」用にとってあるネタがあるんではないですか?
阿部:「ピクミン3」のことは…それを開発するときに考えます(笑)。
記者:最後に山口さん、メッセージをお願いします。
山口:ここ数年、「癒し」が流行っていますよね。ピクミンも癒しキャラだと思われがちですが、私はそれは少し違うと思うんです。
記者:よくある、深みのない癒しのCDなどと、ピクミンとは違うということですか?
山口:そうです。今回、パッケージのデザインは女性のデザイナーに任せたのですが、大人の女性が持つ優しさが感じられるデザインに仕上がっています。生きることの厳しさを表しながら、優しさも感じられるよな。女性向けでも、子供向けでもなく、大人の男性向けでもない、まさに全年齢に向けたこのゲームにふさわしいパッケージデザインになっています。
記者:ゲームの中身からアートワークに至るまで、そういうコンセプトは、この「ピクミン2」で特に強調されていると感じました。
山口:アートワークの素材の撮影で植物園に行ったとき、私は広い場所に両手足を広げて寝転がって、空を見たんです。そんなことをしたのは、小学生以来かもしれません。そのとき、「空の大きさと比べたら、人間の大きさなんてピクミンと大差ないな」と考えたんです。空を見て、「自分なんて、ちっぽけな存在なんだ」と割り切ったからこそ、「こんな世知辛い世の中でも、頑張って生きていこうか」とわきあがってくるような感覚。それが、「ピクミン」の根底に流れているテーマだと、個人的に思っています。こういう感覚を、色んな年代の人に感じ取ってもらえれば嬉しいです。
日野:パッケージには「全年齢対象」と書いてありますが、私たちとしては「全人類対象」だと思っています(笑)。
【コラム】
「ワイルドトラックス」(SNES)という、クレイモデルをアートワークに使ったゲームを知っていますか?このゲームは、山口さんのデビュー作だそうです。
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【まだまだピクミンの話は続きます。】
【画像の説明】
山口:最初の頃はクレイモデルを持って、1人で植物園などへ撮影に行っていました。そしたら幼稚園の遠足に出くわして、子供たちが集まってくるんです。「なにこれー?」って言いながら。僕は彼らから逃げ回っていました(笑)。けれど、それがきっかけとなって、背景とクレイモデルを一緒に撮影することは諦めて、それぞれを別々にデジタルカメラで撮ったものをコンピュータで合成して仕上げるようになりました。だからこのアートワークはすごくデジタルなイラストなのですが、デジタルっぽくならないように、手作り感や温かみを残すことに気を使いました。
山口:最初のうちは、自然を背景に、ピクミンを中心としたイラストばかり制作していました。しかし、「ピクミン2」の発売を延期してからの期間に、「お宝のことをどんどんアピールして」と宮本から言われたんです。だから、アートワーク制作チームからも、ゲーム制作チームに、「こんなお宝を登場させてほしい」という提案もたくさんしました。
記者:この絵の具はどこのメーカーのものですか?(画像を参照)
山口:カミトバ絵の具(笑)…。(注:カミトバ絵の具は実在しない会社です。ちなみに任天堂の住所は京都市南区カミトバのホコタテ町です。)あと、この画像に写っているこの猫は、私が飼っている猫です。名前は「チーちゃん」です。
阿部:そうそう、牛乳ビンのフタを開けるこの道具は、このイラストを見て、ゲームの中にも登場させたんです。
記者:最近はパックの牛乳が主流なので、この道具って見かけませんよね。
阿部:若いスタッフの中には、「これなんですか?」って言う者もいるんです(笑)。
記者:これがジェネレーションギャップ(笑)。
【コラム】
ゲーム内に、写真入りロケット(ペンダント)のお宝が登場します。これに入っている写真は、日本版では山口さんが飼っているチーちゃんです。でも、海外版では、「ピクミン2」開発スタッフの1人である2Dデザイナーの飼い犬のゴンちゃんに替わる予定だそうです。なんで…?
【新しい生物】
日野:うちのデザイナーたちもそうなんですが、絵を描く人には虫や生き物が好きな人が多いみたいです。私たちがスタッフにお願いしたのは、「実際にいそうだけどいないもの」と「突拍子もないものよりは生々しいもの」という、大まかな点だけでした。今回は、生物に気持ち悪さも入れたかったんです。なんだか、原体験(記憶の奥底に残る体験)に響くような。
(画像の説明:初登場の生物には、思わず「気持ちわる〜い!」と叫んでしまうようなものが多いです。)
【オリマー視点のカメラ】
阿部:やっぱり、景色をじっくりと見てほしかったので、これを導入しました。
日野:マップデザイナーたちがこだわったピクミンの世界を、新しい視点でじっくり見てください。
記者:前作のときに、頭上視点では遊んでほしくないと宮本さんがおっしゃっていましたが、今作でも頭上視点は残ったんですね。
阿部:新しいカメラ視点でプレイする実験もしたのですが。やはり頭上視点が遊びやすいのは事実なので、現在の形に落ち着きました。
【ラブテスター】
日野:任天堂は古い会社なんです。トランプや花札にとどまらず、過去にはたくさんの珍品も作ってきました。それらがこのゲームの趣旨にぴったりだったので助かりました。そうそう、麻雀牌や花札は子供が遊ぶゲームにはふさわしくないのではないかという議論もありました。ですが、任天堂にお願いして、あえてそれらも使わせてもらいました。任天堂は古くから人々に娯楽を提供してきた会社なんだっていうことが、どうしても伝えたかったんです。
(画像の説明:「ラブテスター」とは、ゲーム内で手に入るお宝センサーの本当の名前。その昔、任天堂から発売された、男女のラブ度を測るマシンです。これを開発したのは、GBの生みの親である故・横井軍平さん。)
【ランダム生成の地下洞窟】
阿部:これは「ピクミン2」の開発当初から実験・研究を進めてきたシステムです。色々試行錯誤を繰り返しましたが、最終的には現在の矩形ユニットの組み合わせによるマップ生成のシステムになりました。オブジェクト配置は、ユニット固有のスロットから任意に選ばれセットされるという仕組みです。行き止まりでも、そこに行けばなにかいいことがあるかもしれませんよ。
【なくなった爆弾岩】
阿部:前作で、ピクミンの基本性能を見直したところ、黄ピクミンの爆弾岩関連のところだけ、プレイヤーが覚えなければいけない操作や機能がすごく複雑だったんです。「ピクミン2」ではピクミンも5種類に増えたので、ひとつひとつの要素は少しシンプルにしたほうがいいと考えました。そこで、かなり思い切った決断でしたが、黄ピクミンの爆弾岩の性能を変更しました。ところで、これはちょっとしたテクニックなのですが、対戦モードのからくちコース(Hostile Territory)に置いてある爆弾は、プレイヤーが持って投げることができます。ただのちょっとしたお遊びですが、試してみてください。
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【画像の説明】
日野:宮本からは、ゲームの要所の重要なところで鋭い意見をたくさんもらっています。そもそも彼は「ピクミン」のゲームシステムを考案した人ですからね。
【サウンド】
日野:サウンドチームは、最後の最後までこだわっていました。最初、ルーイの笛の音はオリマーと同じだったのですが、キャラクターを引き立てるために変えたほうがいいだろうということで、完成間近の時に変更してくれました。「ピクミン2」はじっくりプレイしてほしいゲームなのですが、それは音楽をじっくり聞いてほしいという意味でもあるんです。地上でも地下でも状況によってサウンドが変化するので、プレイヤーが体感するゲームの手応えは、サウンドに依存している部分が大きいです。
阿部:鳥のさえずりや蝉の鳴き声が聞こえてきますよ。そういうのを聞くと、やっぱりこの近くにピクミンたちがいるんじゃないかと思えてくるかもしれません。
【カードe+】
日野:これはもともと、クリーチャーズさんが、机の上で遊ぶ純粋なカードゲームを企画してくれたことから始まりました。それはピクミンを題材にした、ものすごく面白いゲームだったんですが、色々な事情で発売には至りませんでした。そしたら今度は、彼らはそのカードをカードeリーダー+で読み込めるようにして、GBAで遊べる新たなミニゲームを考えてくれたんです。これが面白かったので、これならばいいだろうということで「ピクミン2」と連携して遊んでもらおうということになりました。
【希望の森(Forest of Hope)とめざめの森(Awakening Wood)】
阿部:これらは全く同じではないけれど、いつか歩いたことがあると思える既視感を狙って、わざと似せた造りにしています。
日野:これらは同じ場所かもしれないとか、時間が流れて人間の手が入ったのかもしれないとか、色々な空想をしてほしいです。
(画像の説明:これは前作の「希望の森」。やっぱりめざめの森に似ています…。)
【ピキノツユクサ(Burgeoning Spiderwort)】
日野:これは、農耕っぽい遊びを作ってみたかったんです。農耕と言ってしまうと、何か大げさなものに聞こえてしまうのですが、とにかく、余分なものを排除して植物が育つ状態を作ったら、実りを収穫できるというシステムです。それは私自身が、地道に遊ぶというか、採集する遊びが好きだったから思いついたことです。
(画像の説明:ピキノツユクサの実が視界に入ると、収穫せずにはいられなくなります。)
【ピクミンが影響を受けた作品】
日野:前作の開発中、キャラクターデザインをどうしようかと話し合っていたときに、みんなで回し見たのが「ファンタスティック・プラネット」というフランスのアニメ映画です。奇々怪々というか、シュールで意味不明な映画なのですが(笑)。設定面ではありませんが、デザイン面での影響は受けました。
(画像の説明:ファンタスティック・プラネットは1973年のフランス・チェコ映画。監督・脚本はルネ・ラルー。巨大生物に支配されたある星の出来事を描いたアニメーション。カンヌ映画祭特別賞を受賞した。さっそく編集部でも映像を入手して見てみたのだけど、あまりのシュールさに途中で寝てしまいました(笑)。というか、この映画のどのあたりにピクミンが影響されたのか、全く分からないのですが…。)
4月29日、緑の日に会いましょう。